神戸地方裁判所 平成3年(わ)572号 判決 1992年11月13日
本店の所在地
神戸市須磨区平田町二丁目三番一号 興亜ビル
法人の名称
興亜地所株式会社
右代表者代表取締役
近藤操
本籍
神戸市西区玉津町田中七九番地
住居
神戸市灘区篠原本町三丁目八番二七号
会社役員
近藤文夫
昭和一五年一一月二七日生
右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官巖文隆出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人興亜地所株式会社を罰金七〇〇〇万円に、被告人近藤文雄を懲役二年に処する。
被告人近藤文雄に対し、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人興亜地所株式会社は、神戸市須磨区平田町二丁目三番一号興亜ビルに本店を置き、不動産の売買及び仲介業を営むもの、被告人近藤文夫は、同会社の実質経営者としてその業務全般を統括しているのであるが、被告人近藤は、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、同会社の昭和六四年一月一日から平成元年一二月三一日までの事業年度において、その所得金額が五億三四一五万八六〇四円、課税土地譲渡利益金額は三億六七八四万三〇〇〇円で、これに対する法人税額は三億三三六二万四七〇〇円であるにもかかわらず、虚偽の不動産売買契約書を作成して、土地譲渡金額を圧縮するなどの行為により、その所得金額のうち、三億九三二四万六九七二円及び課税土地譲渡利益金額のすべてを秘匿したうえ、平成二年二月二八日、同市須磨区衣掛町五丁目二番一八号所在の須磨税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額が一億四〇九一万一六三二円、課税土地譲渡利益金額はなく、これに対する法人税額が五八一〇万八〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同事業年度法人税二億七五五一万六七〇〇円を免れたものである。
(証拠の標目)
一 被告人近藤文夫の当公判廷における供述
一 被告人近藤文夫の検察官に対する供述調書三通及び大蔵事務官に対する質問てん末書一四通
一 近藤操の検察官に対する供述調書
一 片山清一の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書
一 岸本國廣の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書三通
一 平山孝一の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書
一 藤丸英雄の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書
一 新井脩の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書二通
一 川辺敏郎の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書
一 古野正明の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書二通
一 増口栄一(二通)、西岡信孝の検察官に対する各供述調書
一 齊川和夫、宮本正明、森和弘、村田慎子、香野政民こと宋政民、今井比佐代の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 塩田貴能作成の「供述書」と題する書面
一 大蔵事務官作成の「脱税額計算書」、「証明書」と題する各書面
一 大蔵事務官作成の「査察官調査書」と題する書面一六通
一 大蔵事務官作成の「確認書」と題する書面二通
(累犯前科-被告人近藤文夫に関して)
被告人近藤文夫は、昭和六〇年五月二一日神戸地方裁判所で道路交通法違反罪により懲役四月に処せられ、昭和六一年一二月二一日右刑の執行を受け終わったものであって、右事実は、検察官事務官作成の前科調書によってこれを認める。
(法令の適用)
被告人近藤文夫の判示所為は法人税法一五九条一項に該当するところ、所定刑中懲役刑を選択し、同被告人には前記の前科があるので、刑法五六条一項、五七条により再犯の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役二年に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する事とする。
さらに、被告人近藤文夫の判示所為は被告人興亜地所株式会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、法人税法一六四条一項により同法一五九条一項所定の罰金刑に処せられるべきところ、情状により同条二項を適用し、その金額の範囲内で被告会社を罰金七〇〇〇万円に処することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 小川育央)